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2007年のニュース
コンピュータ細胞で赤血球が酸素を感知するメカニズムを予測 | コンピュータ細胞で赤血球が酸素を感知するメカニズムを予測 |
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(07.02.13) 慶應義塾大学医学部医化学教室(末松 誠教授)と同大先端生命科学研究所(政策・メディア研究科博士課程3年木下綾子さん、冨田勝所長、曽我朋義環境情報学部教授)の共同研究チームは細胞内で起こる多数の酵素反応をコンピュータ上に再現した大規模代謝システムシミュレーター(E-CELL赤血球)を利用し、低酸素状態における細胞の代謝応答を予測し、メタボローム技術による実測実験を行うことによって、計算機科学を利用した生命現象の予測と実証を行いました。本研究成果は米国生化学分子生物学会誌:Journal of Biological Chemistry(2007年2月9日付け、JBC on line)」に掲載されました。 代謝は多数の酵素反応と個々の反応を制御する分子群が統合されたシステムの中で行われる生命現象です。個々の酵素反応は数式で表現できるため、すべての酵素反応と個々の反応を制御する「しくみ」をコンピュータ上に再現すれば「代謝シミュレーション」を構築でき、これを利用することによって特定の病態が起きたときに細胞の代謝にどのような変化が起こるかを「予測」できるはずです。しかしシミュレーションの正しさは実測実験で検証しないと確認できないため、生命現象を扱うシミュレーション科学の応用や実用には高いハードルがありました。 文部科学省リーディングプロジェクト「細胞生体機能シミュレーション」慶應義塾大学拠点(代表:末松 誠医学部教授)ではこの問題に正面から取り組み、細胞構造と代謝システムが他の細胞に比べて比較的単純なヒト赤血球の代謝シミュレーション(E-CELL赤血球)を開発しました。本研究ではE-CELL赤血球が、赤血球が末梢組織に到達して低酸素に曝露されるとヘモグロビンをスイッチにした巧妙なしかけで解糖系を活性化し、細胞機能の維持や局所の血流調節に必要なATP(アデノシン3燐酸)と、酸素を組織に放出するために必要な2,3-BPG(bisphosphoglycerate)という代謝物を同時に増加させることを予測しました。この予測を実証するため、メタボローム解析を用いて実際の代謝物質濃度を定量したところ、E-CELL赤血球モデルの予測値とメタボローム測定の実測値の挙動は良く一致していました。 今回開発した代謝シミュレーションはいわば「五目並べ」程度の生命現象に関する予測問題の解決は可能ですが、チェスの世界チャンピオンと互角異常に戦えるほどの生命現象の問題解決能力はまだありません。しかし、細胞の生存に関わるしくみを作動させるために「なぜ特定の酵素だけが活性化される必要があるのか」といった疑問に対して、実際の生体内では再現が不可能な他の酵素の機能を欠失させた「バーチャルモデル」と比較することによって、解答を導き出すためには極めて有効な方法であることが実証されました。シミュレーションを精密化したり、他の細胞バージョンを構築することにより、今後一層生命科学研究の発展に寄与するものと期待しています。 |