所長挨拶
慶應義塾大学先端生命科学研究所 所長
荒川 和晴
慶應義塾大学先端生命科学研究所は、2001年より慶應義塾、鶴岡市、そして山形県が一体となって取り組む「アカデミックベンチャー」です。豊かな精神文化と教育哲学が先端産業や田園風景と調和する山形県鶴岡市に居を構え、データ駆動型生命科学の最先端を開拓する世界的パイオニアとして発展を続けています。
同研究所は、「細胞シミュレーション」、「メタボローム解析」、そして「バイオマテリアル」における世界的拠点であり、国内外における多数の共同研究を主導し、各領域の革新を推し進めてきました。さらに、最先端の基礎研究を元にした新産業を育むことで、地方創生と共に人類の未来を切り拓くことをミッションとしています。
学問だけでなく、社会的にも技術的にもさまざまな物事が今まさに転換点を迎えつつあります。このような激動の時代においては、流行や「選択と集中」に迎合せず、自由な発想と好奇心に根付いたチャレンジこそが、真に新しいパラダイムを拓くことができます。そのためには、学問領域や立場や年齢などの垣根を無くし、異分野だろうと教授だろうと学生だろうと分け隔てなく、共にサイエンスを楽しむ仲間として尊重し合い、学び教え合い、全力で「遊ぶ」気概が必要です。福澤諭吉が言うように、「半学半教」で「異端妄説の譏を恐るることなく」取り組むことこそが本質的な革新への近道です。
豊かな発想は喧騒や競争の中では育みにくいものです。温泉も、ビーチも、スキー場もすぐ近くにある鶴岡市は三件の日本遺産を有し、ユネスコ食文化創造都市でもあります。豊かな自然と文化を持つ鶴岡でこそ取り組めるサイエンスを展開していきます。