所長挨拶
慶應義塾大学先端生命科学研究所 所長
冨田 勝

日本社会は失敗を許さない雰囲気があります。だから確実に成果が見込まれる研究に優先的に予算をつける傾向があります。しかしそれではブレークスルーは出てこないし、若手がチャレンジする意欲を減退させてしまいます。
慶應義塾はこの研究所を「アカデミックベンチャー」と位置付け、失敗を恐れず未知の領域に果敢に挑戦し、新規先端技術の開発を積極的に推進します。本研究所は細胞工学、分析化学、代謝工学、分子遺伝学、ゲノム工学や情報科学といった異分野の研究者がひとつ屋根の下に結集し、「統合システムバイオロジー」という分野の開拓を推し進める世界的パイオニアです。われわれの独自技術である「細胞シミュレーション」や「メタボローム解析」も、研究所開設当初はほとんど見向きもされませんでしたが、今や世界でその重要性が認知され多くの研究グループが我々の技術を取り入れています。
最先端の学問分野においては、教授も学生と一緒に勉強しなければなりません。本研究所では福澤諭吉の「半学半教」の精神に基づき、年功序列的な雰囲気を一掃しています。世界の誰も挑戦したことのないプロジェクトに、教授、若手研究者、学生が一体となって取り組み、共に成功を喜び、共に失敗を悲しみ、共に学び、時には語り明かすとき、日本で忘れかけてきた「サイエンスの楽しさ」がよみがえることでしょう。
また、都市圏に集中する傾向のある日本のアカデミズムにおいて、自然豊かな郊外でこそ豊かな発想を育む、という欧米型キャンパスを目指して山形県にキャンパスを開設したことも慶應義塾のチャレンジと言えましょう。ビーチまで15分、スキー場まで30分という鶴岡の豊かな自然を背景に、私たちは日本のサイエンスのあり方を一新することにも挑戦しています。

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