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MEGU: 統合パスウェイマップへの複合データ可視化システムの開発

ゲノム、メタボローム、プロテオームなどの大量データ解析の為のパスウェイ可視化webサービスを公開

1. Kono, N., Arakawa, K. and Tomita, M.(2006). MEGU: Pathway mapping web-service based on KEGG and SVG. In silico biology.


 さまざまな計測機器の発展により、細胞内の分子の定量的な情報を得ることができるようになってきている。しかし、そこから生み出される数千・数万もの数字の羅列から細胞を理解することはむずかしく、これらの情報をわかりやすく見せる方法 ?データ可視化技術? が重要になってきている。

 河野らは、生体内における生化学反応を図式化したパスウェイ図に、自動的に情報を描画するシステム:MEGU(Metabolism and Expression Graphing Utility)を開発した。これまで一つの対象に限定されることが多かった、遺伝子/代謝物質/酵素など、生体内パスウェイを理解する上で不可欠な要素 をすべてあわせて描画することで、それらの相互作用を容易に見てとることを可能にした。

 多次元にわたる大規模データを二次元のパスウェイ図に表現するのはむずかしい。 ここで威力を発揮するのが色情報である。MEGU上に描写された遺伝子や代謝物質をあらわすノードには、任意で色をつけることができる。このように、実験 的に得られた定量的データ(酵素や基質の物質量や遺伝子の発現量)を色情報として自動的に反映させることで、直感的な比較を可能にした。たとえば、数字 データのみでの解析が難しいマイクロアレイによる遺伝子発現量のデータを入力すると、mRNAの量が色と対応づけられ、パスウェイ全体におけるそれぞれの 遺伝子の発現量の推移を俯瞰する事ができる。異常な発現をしている遺伝子を見つければ、その周辺の反応から研究者はその理由を推測することができるという わけである。

 また遺伝子発現量データのみならず、質量分析装置などを用いて測定された代謝物質量データにも対応させることによってメタ ボローム解析への応用も進められている。IAB発の質量分析装置CE-MS(Capillary Electrophoresis _ Mass Spectrometer; キャピラリー電気泳動と質量選択検出器をつないだ装置)を用いた代謝物質一斉同定の結果をMEGU上に表示させることにより、環境に応じて生体内でどのよ うな経路が活性化されているのか、といった疑問に対して直感的に答えが示される。これにより、これまで見過ごされていた現象の発見や新たな展開へと繋がっ ていくことが期待されている。

 さて、これまでパスウェイ図を扱う時には、連続している反応経路が二つのパスウェイ図に分断されてしまっ ている部分では物質のやり取りや触媒反応などの相互作用が表現されなくなる、という点が常に問題であった。逆に言えば、パスウェイ図の境界にあるために表 現されていない相互作用は無視されてしまっているという問題があった。しかも、既存の可視化ツールでは、隣りあうパスウェイ図へのリンクをたどって移動し た時に始めにいたパスウェイ図をそのまま表示させておくことができなかったのである。そこで、MEGUには一つのウインドウ内で複数のパスウェイ図とその 間にある相互作用を表現する機能が実装され、今までにないシームレスな生体内パスウェイをコンピューター上に再現することができるようになった。パスウェ イ図全てを統合した大規模パスウェイマップ、Integrated mapも公開されて居り、誰でも利用することができる。

 更に MEGUには、既存のパスウェイ図を用いた大規模データの視覚的解析のみならず、実験によって同定された新たな経路をコンピューター上に構築するという利 用法もある。ノードの数や状態、相互作用を任意に指定できるため、ユーザーが自由にネットワークを組むことができるのである。

 MEGU の機能を支えているのは、描画時に働いているSVG(Scalable Vector Graphics)である。既存のパスウェイ図はもちろん、新たに作成したパスウェイ図をxml形式で出力することで、テキストレベルの直接編集や Adobe Illustratorによる編集も可能となっており、用途は幅広い。今後、網羅的解析を専門とするバイオインフォマティシャンだけではなく、実験を行う ウェットの研究者にとっても、視覚的な理解を助ける有用なツールとなるだろう。

参考URL
MEGU: http://megu.iab.keio.ac.jp


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<図の説明>
統合マップと各々のパスウェイの描画例。色は1?100の整数値で指定することができる。遺伝子の発現量は赤から緑へ、代謝物質は黄色から青へと量の増加に合わせて推移する。A:解糖系、B:TCA回路。

[ 編集: 小川 雪乃 ]

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