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2004年のニュース

ひとつの遺伝子から複数のたんぱく質を生成するための暗号を同定慶大4年生の論文が国際専門誌に掲載される

慶應義塾大学環境情報学部4年生の伊藤ひとみさんが先端生命科学研究所において、鷲尾尊規講師と冨田勝教授の指導のもとに行った研究成果が、「RNA Society」が刊行する国際専門誌『RNA』の7月号(6月22日発刊)に掲載されました。(RNA Volume 10, Issue 7 :p.1005-1018 (2004)HITOMI ITOH1, TAKANORI WASHIO1, MASARU TOMITA Computational comparative analyses of alternative splicing regulation using full-length cDNA of various eukaryotes )大学生が第一著者の論文が国際専門誌に掲載されるのは極めて異例なことです。

昨年(2003年4月)に解読が完了したヒトゲノムの解析によると,ヒトの遺伝子数はたかだかショウジョウバエの2倍程度で、イネよりも少ないとされま す。この限られた遺伝子情報から複雑なヒトの細胞機能を実現するためには、ひとつの遺伝子から複数種類のたんぱく質を生成する「選択的スプライシング」と いうメカニズムが極めて重要な役割を持つと考えられていますが、その詳しい機構はよくわかっていません。本研究ではバイオインフォマティクスの手法を駆使 し,遺伝子配列中の「GAAGAA」かそれに類似した配列が選択的スプライシングの制御に深く関与していることを突き止めました。

ヒト、 マウス、ショウジョウバエ、イネ、シロイヌナズナの5種類の動植物のゲノム配列と発現配列(cDNA)をコンピュータで大規模・網羅的に解析したところ、 選択的スプライシングによって複数種類のたんぱく質を生成する遺伝子には、一種類のたんぱく質しか生成しない遺伝子に比べて、GAAの繰り返し配列(また はそれに類似した配列)が有意に多く存在していることを見出しました。このことは、DNAのGAA繰り返し配列に結合する因子が、選択的スプライシングの オン・オフの制御に深く関与していることを示唆しています。GAA繰り返し配列に結合する因子はすでにいくつか同定されているため、本研究成果は未知の部 分が多い「選択的スプライシング」のしくみを解明するための重要な鍵となりえます。

研究を行った伊藤さんは「2年近く試行錯誤を繰り返してようやくたどり着いた研究成果。学部卒業前に国際論文誌掲載が決まったことは夢のよう」とコメントしています。

このニュースは下記のメディアでも報道されました。

・日刊工業新聞 6/24 32面

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