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バクテリアにデータを保存する新技術を開発

慶應義塾大学先端生命研究所と同大湘南藤沢キャンパス (SFC) らの研究グループはバクテリアなどの細菌類をデータの長期記録媒体として有効活用する新技術を開発することに成功しました。

す べての生物はその遺伝情報を記録するゲノムをもちます。ゲノムは、A、T、G、Cの四文字からなるDNAの配列で構成され、生物固有の遺伝情報もその DNA配列の並び方によって決まっています。研究グループは、バクテリアのゲノムDNA配列に人工DNA配列を挿入することによって、バクテリアにデータ を長期保存する新技術を開発しました。バクテリアなどの細菌類はその大きさが非常に小さいことや、世代を経てゲノムに遺伝情報を残していくため、CD- ROM、メモリースティック、ハードディスクといったコンピュータに用いられる磁気メディアと比較して格段に小さく、大容量のデータが長期にわたって保存 可能な記録媒体になりうるとして注目されています。しかしながら、生物は世代を経るごとにゲノムDNA配列を徐々に変化させるため、挿入した人工DNA配 列も同時に変化してしまい、記録した情報が壊れやすいことがこれまで大きな壁となっていました。

そこで研究グループは、情報をDNA配列に変換して合成した人工DNAを、枯草菌Bacillus subtilisと いうバクテリアのゲノムDNAの複数箇所にコピーして挿入する技術を開発しました。この技術では、保存した情報を読み取るときに、バクテリアの全ゲノム DNA配列からコピーされた同じDNA配列を「あぶりだす」ことができます。また、記録した情報が部分的に破壊されてしまっても、他のコピー配列から正し い情報に修復できるようになりました。研究グループは実際に、1905年にアインシュタイン博士が発表した相対性理論の方程式にちなんで「E=mc2 1905!」というデータを枯草菌に保存し、コンピュータシミュレーションを行って、新技術が世代を経ていくバクテリアに数百年から数千年もの間データを記録できる可能性を示しました。

なお、この技術成果は米化学会が発行する国際学術誌Biotechnology Progressの電子版に掲載され、現在までに多くの海外メディアから取材を受けています。

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今回の研究に使われたものと同種の枯草菌

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