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メタボローム解析で血液から「体内時刻」を測定する方法を開発

慶應義塾大学先端生命科学研究所と独立行政法人理化学研究所(以下理研)・発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長)の研究グループ は、慶大先端生命研が開発した最新のメタボローム測定法を用いて、マウスの血液中の代謝産物を大規模に解析し、24時間周期で量が変動する数百個の物質 (概日振動物質)を同定しました。さらに変動する各物質の量から代謝産物時刻表を作成し、体内時計が示す時刻「体内時刻」を測定することに成功しました。 慶大先端生命研の曽我朋義教授、嘉数勇二研究員らと理研・発生・再生科学総合研究センターシステムバイオロジー研究チームの南陽一研究員、粕川雄也研究 員、上田泰己チームリーダーの成果です。本研究成果は、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(米国科学アカデミー紀要) 2009.6.1 オンライン版に掲載されました。

http://www.pnas.org/content/early/2009/06/01/0900617106.abstract

毎日夜になれば眠くなるように、私たちの体の中では、体内時計に基づいて24時間周期でさまざまな現象が生じます。これまで体内時刻を測定すること は簡単ではありませんでした。研究グループは、血液中の各代謝物質の量が時間と共に変動していることに着目し、体内時刻を測定する方法の開発に成功しまし た。


研究グループは、マウスの血液を一日のさまざまな時刻で採取し、時々刻々と変化する多数の代謝産物の量を、キャピラリー-電気 泳動-質量分析計(CE-MS)と高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)を使って一斉に測定(メタボローム解析)しました。その結果、一日 のうちで周期的に量が変化する概日振動物質を471個特定し、それらを時刻順に並べ替えた「代謝産物時刻表」を作成しました。任意の時刻にマウスから血液 を採取して代謝産物量を測定し、この時刻表に照らし合わせて体内時刻を推定したところ、実際の体内時刻を正確に推定できることが示されました。この方法の 有用性を確認するために、時差ぼけの状態にしたマウスの体内時刻を測定したところ、外界の時刻と体内時刻が乖離(かいり)している(時間のずれがある)こ とが示されました。「体内時計」の推定が人間でも可能になると、概日リズム障害を診断したり、その人の体内時刻を勘案して、適切な時刻に適切な治療を行う 「時間治療」の実現が期待できます。

冨田所長は「規則正しい生活が健康の秘訣といわれますが、今回の研究成果は生活リズムの解明のためにとても重要です。山形発の先端技術を駆使し、世界トップレベルの理研グループと協力してこの研究をさらに発展させ、人類の健康に貢献したい。」とコメントしています。

このニュースは下記メディアで報道されました。
・山形新聞 5/26 22面
・日経産業新聞 5/26 11面
・日刊工業新聞 5/26 27面
・荘内日報 5/27 1面トップ
・河北新報 5/28
・毎日新聞(全国版) 6/16
・神奈川新聞 7/6

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