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慶應義塾大学先端生命科学研究所、オールジャパン体制で新薬開発へ

慶應義塾大学先端生命科学研究所(以下慶大先端研 所長 冨田 勝)は、独立行政法人医薬基盤研究所(理事長 山西弘一)の「保健医療分野における基礎研究推進事業」において、8つの国立の研究機関とチームを組んで、新薬開発研究を開始することを発表しました。(参考ページ:(独)医薬基盤研究所 平成22年度新規採択プロジェクトについて

この事業は、疾患患者から採取した病変組織および正常組織に存在する数万種類以上の生体分子をゲノム(※1) ・エピゲノム(※2) ・トランスクリプトーム(※3) ・プロテオーム(※4) ・メタボローム(※5) ・バイオインフォマティスの最新のバイオ技術を用いて網羅的に測定し、病変と正常組織の比較に基づき、新規の創薬標的分子見いだそうとする研究プロジェクトです。


慶大先端研は、国立の7つの研究機関(いわゆるナショナルセンター、国立医薬品食品衛生研究所国立精神・神経医療研究センター国立がん研究センター国立国際医療研究センター国立循環器病研究センター国立成育医療研究センター国立長寿医療研究センター)と東京大学 先端科学技術研究センターと研究チームを組み、本事業(研究チームに5年間で60億円の予定)に採択されました。(課題名「多層的疾患オミックス解析における、メタボローム情報に基づく創薬標的の網羅的探索を目指した研究」、総括研究代表者:斎藤嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所))

ナショナルセンターを中心とした研究チームでは、参画した9つの機関がそれぞれの強みのある解析を担当します。慶大先端研は、鶴岡に2001年の設立当初から世界に先駆けて開発してきたCE-MS(キャピラリー電気泳動-質量分析計)法によるメタボローム解析技術(※6) が高く評価されており、ナショナルセンターからの要請を受けて研究チームへ参加しました。慶大先端研は、イオン性メタボローム測定を分担担当し、曽我朋義 教授が研究代表者を務めます。慶大先端研には、平成22年度からの5年間で2億4000万円の研究費が国から支払われる予定です。


本 研究事業は、ナショナルセンターで採取された肺がん、乳がんや心筋症、動脈硬化、肥満症、認知症など13種類の疾患患者の組織が各研究拠点に送られ、各研 究拠点が組織中の担当の生体分子を大規模に測定します。得られたゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボロームの情報を比較、統 合解析することによって、予防、診断、創薬の分子標的を網羅的に探索するものであり、このような生体内の全ての分子を大規模測定して医療に役立てようとす る研究は、世界でも初めての試みです。


曽我教授は「年間に数100検体は測定するという大規模なプロジェクトであるが、医療の発展に役立つ大きな発見が出ることが期待でき、大変楽しみ。」とコメントしています。


冨田所長は「山形県が日本の新薬開発の重要な知的拠点として、ますます発展していくことの一助を担えてとてもうれしい。」とコメントしています。

このニュースは下記メディアでも報道されました。
・読売新聞 4/16  24面
・荘内日報 4/17 1面トップ記事

用語解説

(※1)ゲノム・・・ある生物の持つ全ての遺伝情報の総称。
(※2)エピゲノム・・・後天的な作用によって遺伝子に変異が入るが、変異を受けた遺伝子の総称。がんや生活習慣病へのカギとなる重要な情報としていま注目を集めている。遺伝子に変異が入る主なものにメチル化、アセチル化などがある。
(※3)トランスクリプトーム・・・細胞内に存在する遺伝子産物であるmRNA(一次転写物:ゲノムDNAから転写されたRNA分子)の総称。
(※4)プロテオーム・・・細胞内に存在する全てのたんぱく質の総称。
(※5)メタボローム・・・細胞内に数千種類存在すると言われる代謝物質(メタボライト)の総称。主なものにアミノ酸、糖、脂質などがある。
(※6)CE-MS法によるメタボローム解析技術・・・慶大先端研が世界に先駆けて開発し2002年に基本特許を取得した、細胞内に存在する数千種類の代謝産物の定量解析を初めて可能とした技術。

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