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なぜ 酒で煮ると超伝導物質に変わるのか?

独立行政法人 物質・材料研究機構(理事長:潮田資勝、茨城県つくば市、以下NIMS)は、鉄系超伝導関連物質である鉄テルル化合物〔Fe(Te,S)系〕を酒中で煮る と超伝導体に変わることを発見しました(平成22年7月27日 NIMS-独立行政法人科学技術振興機構共同プレス発表)。今回、慶應義塾大学先端生命科学研究所(所長:冨田勝、山形県鶴岡市、以下慶應大先端研)との 共同研究により、酒中に含まれる超伝導誘発物質を同定し、その誘発メカニズムを明らかにしました。

  1. 慶應大先端研が開発したメタボロミクスの手法であるキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析装置(CE-TOFMS)を用いて、6種類 の酒(赤ワイン・白ワイン・ビール・ウイスキー・日本酒・焼酎)に含まれる成分を網羅的に定量し、それと超伝導体積率を比較することで超伝導を誘発する候 補物質を絞り込みました。
  2. その候補物質の中でも特に相関が高いリンゴ酸・クエン酸・β-アラニンについて、実際に超伝導誘発作用を持つことを確認しました。
  3. 候補物質がすべてキレート作用を持つ点に着目し、酒及び上記3物質で鉄テルル化合物を煮た後の溶液を調べてみると、試料から溶出したと思われる鉄イオンが検出されました。
  4. 以上のことから、酒中の超伝導誘発因子とはキレート効果を持つ有機酸などであり、それらが試料から超伝導を抑制する余分な鉄を除去することで超伝導が誘発されると結論づけました。
  5. 余分な鉄が超伝導に悪影響を与える可能性は他の鉄系超伝導体でも十分起こりうることから、本研究成果は鉄系超伝導体の研究開発に新たな指針を与えると期待されます。
  6. 本 研究はNIMSナノフロンティア材料グループの高野義彦グループリーダーらと、慶應大先端研の佐藤暖特任助教らの共同研究の成果であり、国際学術誌 Superconductor Science and Technologyの鉄系超伝導特集号(2012.7)に掲載されました。

このプレスの詳細はこちらをご覧ください。

このニュースは下記のメディアで報道されました。

  • 7/17 日刊工業新聞 17面
  • 7/17 日本経済新聞 11面
  • 7/17 日経産業新聞 10面
  • 8/7 毎日新聞 26面
  • 8/9 朝日新聞 29面

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