慶應義塾大学先端生命科学研究所慶應義塾大学先端生命科学研究所

ニュース&イベント

HOMEニュース&イベント 2012年 修士課程学生の研究成果、国際学会で表彰される

2012年のニュース

修士課程学生の研究成果、国際学会で表彰される

慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市、冨田勝 所長)で研究活動を進めている大学院修士課程1年の石井千晴君は、公益財団法人実験動物中央研究所との共同研究において、食事や加齢がマウスの腸内環境に 与える影響についての解析を行い、その研究成果を11月19?21日にアメリカ合衆国、サンアントニオにて開催されたProbiotics-2012にて発表し、Student Poster Award第1位を受賞し、表彰されました。

「Probiotics-2012」は、ヨーグルトの整腸作用などで注目されている"プロバイオティクス"(腸内細菌のバランスを正常化することで健康増 進に効果のある微生物や食品)をメインテーマにした学会で、腸内細菌と健康に関わる様々な研究が発表されました。本学会で授与されたStudent Poster Awardは、学生及び博士号取得後1年未満の若手研究者を対象に、優れた「"食"に関わるポスター発表」に対して贈られるもので、石井君は修士課程1年 生ながら、英国やドイツの博士課程学生や博士研究員(博士取得後一年未満)を押さえ、最優秀賞(第1位)を獲得いたしました。副賞として奨学金500ユー ロが贈られました。

本研究は、我々の腸内で非常に重要な役割を担っている"腸内細菌"に着目して「食生活や加齢が腸内環境に与える影響」を明らかにしようとするものです。腸 内細菌は消化の補助やビタミンの生成、免疫システムの構築などの役割を担い、我々の健康維持に欠かせない存在ですが、高脂肪の食生活や加齢などによって腸 内細菌のバランスが乱れると肥満や糖尿病、大腸がん、アレルギーなどのリスクが高まるといわれており、腸内細菌が我々の体に与える影響を理解・制御するこ とは疾患予防において重要な課題です。そこで石井君は、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析)を用いた「メタボローム解析」と、 最新鋭のDNA解析機を用いた「メタゲノム解析」という手法を組み合わせて、高脂肪食もしくは通常食を摂取させたマウスの腸内細菌の構成と糞便中代謝物質 の濃度を網羅的に比較しました。その結果、高脂肪食を与えたマウスは、腸内細菌の構成が劇的に変化し、またビタミンB6が顕著に減少することを示しまし た。

石井君は受賞に際し「国際学会でこのような賞を受賞することができ、喜びと感謝でいっぱいです。先端生命科学研究所の恵まれた実験設備と、集中して研究に 取り組むことができる素晴らしい鶴岡の環境が受賞につながったと思います。世界に誇れる成果を出せるよう、今後も精一杯努力していきたいと思います。」と コメントしています。

冨田所長は受賞に際し「ヒトの腸内には百種類以上の細菌が存在し、重さにして1kg~ 2kgあり、ひとつの臓器に匹敵すると言えますが、その詳細はほとんど理解されていませんでした。石井君の研究は、鶴岡の最先端設備を駆使してその謎に迫 るというもので、健康科学への貢献がおおいに期待されることから、今回の受賞は順当なものだと思っています。これからも 多くの研究成果を鶴岡から世界に発信していきたい。」とコメントしています。

TOPへ