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腸内細菌は宿主の食生活に遺伝子変異で適応する ~無菌マウスと大腸菌を用いた人工共生系で明らかに~

慶應義塾大学先端生命科学研究所に所属する慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程3年月見友哉と福田真嗣特任教授(順天堂大学大学院医学研究科細菌叢再生学講座特任教授・神奈川県立産業技術総合研究所腸内環境デザイングループグループリーダー・筑波大学医学医療系客員教授・JST ERATO 深津共生進化機構プロジェクト副研究総括を併任)らの研究グループは、無菌マウス1) と大腸菌を用いた人工共生系2) において、腸内定着時に生じる大腸菌ゲノムの遺伝子変異は、宿主であるマウスの食餌の種類に依存して変化すること、およびこれらの変異株はマウス腸内の栄養素を効率的に利用する能力を高めることで、遺伝子変異のない大腸菌株よりもマウス腸内で優勢になることを明らかにしました。
マウス腸内に大腸菌が定着する際に蓄積する遺伝子変異は、先行研究によってある程度知られていましたが、宿主の食事がその遺伝子変異に与える影響については明らかになっていませんでした。そこで本研究では、遺伝子の変異を起こりやすくした大腸菌を無菌マウス腸内に定着させる実験を通じて、宿主の食餌内容と腸内定着時の大腸菌遺伝子変異との関係を網羅的に解析しました。その結果、大腸菌の腸内定着時には、糖の代謝に関わる3つの遺伝子が変異し、機能を失っていることが分かりました。更にこれらの遺伝子変異を導入した大腸菌株を作成し、遺伝子が変異していない大腸菌株とあわせて無菌マウスに経口投与したところ、遺伝子変異をした大腸菌株がマウス腸内で優勢になることが明らかとなりました。一方、通常より糖の量が少ない、組成の異なる餌を与えたマウスに同様の試験を実施したところ、遺伝子変異を導入した大腸菌株の優勢度が低下したことから、食餌の種類が大腸菌の遺伝子レベルでの適応度3) に影響を及ぼすことが明らかとなりました。
本成果は、米国微生物学会が出版するオンライン学術誌「mSystems 」に1月11 日付(現地時間)で掲載されました。

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