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ゲノム損傷応答研究プロジェクト/DNA damage response Project
ゲノム損傷応答研究プロジェクト/DNA damage response Project

約60億塩基対から成るヒトゲノムの正確性の維持機構の一つにゲノム損傷応答(DNA damage response, DDR)があります。ゲノム損傷応答の代表的な機構としては、DNA修復や細胞周期チェックポイントが知られており、これらは損傷を受けた細胞を生存させるために重要です。
一方で、ゲノム損傷を受けた細胞を積極的に排除する機構もあり、本プロジェクトではSLFN11遺伝子を介した細胞死に注目しています。SLFN11は、シスプラチンなどのDNA障害型抗がん剤によって、ゲノム損傷が起こったときに、クロマチンに結合してDNA複製を停止させるほか、複製フォークの分解亢進やtRNAの切断、一部のタンパク質の翻訳障害を起こすことが知られています。その結果、がん細胞におけるSLFN11の発現が高いと、DNA障害型抗がん剤の抗がん効果が高まることがわかっていて、患者サンプルの解析でもSLFN11の有用性が示されています。SLFN11は、がんの種類にもよりますが、約半数のがん組織で発現しているので、DNA障害型抗がん剤の効果予測バイオマーカーとしての臨床応用が期待できます。
本プロジェクトでは、SLFN11のさらなる機能解析や発現制御機構の解明を中心に、ゲノム損傷応答研究をがん治療で役立てることを目標にしています。
文献/Publication

村井 純子 特任准教授
Junko Murai
Project Associate Professor